[SIF対談]

第三弾:YOUR SONG IS GOOD × SCOOBIE DO

2010.06.27 Sun

今年結成15周年を迎えますます純粋に、そして奔放にバンド道を突き進むスクービードゥー(コヤマシュウ、マツキタイジロウ、ナガイケジョー、オカモト"MOBY"タクヤ)。先日初の野音ワンマンを成功させ、バンドとしての新たなステップを昇ったYOUR SONG IS GOOD(サイトウ"JxJx"ジュン、ヨシザワ"モーリス"マサトモ)。ファンクの絆で結ばれたタイトゥンアップな二組が、ざっくばらん語りあったクロストーク!

構成/宮内 健(ramblin') 撮影/相澤心也

「Tighten Up」は 原曲超え出来ない、発明品。
JxJx 俺が最初にスクービードゥーのことを知ったのは、バリカク(カクバリズム 角張 渉)の部屋なんですよ。あいつの部屋に転がってたCDのケースが割れててね。
コヤマ それ、いいのか悪いのかわかんないな。聴きすぎて割れたのか、ただ踏んづけちゃって割れたのか(笑)。
JxJx (笑)それは本人に確認しないとですね。でもそこで、こういうバンドがいるんすよって聴かせてもらったんで、たぶんよく聴いてたんだと思います。インディーのファーストでしたね、たしか(『DOIN' OUR SCOOBIE』・1999年)。割れてましたよ、ケースが(笑)。
コヤマ ちょっとそこは角張に問いただしたい! 回答次第によっちゃ、下北沢インディーファンクラブに出ないってことも考えられなくもないから(笑)。
マツキ 俺らがユアソンを知ったきっかけは、当時のエンジニアから、インディーで出した黄色いジャケの(『COME ON』・2002年)CDを聴かせてもらったのが最初かな。その後わりとすぐに、RAW LIFEで一緒になったんだよね。
MOBY 2004年の、1回目のRAW LIFEですね。
モーリス 初めてRAW LIFEでライヴを観た時に、盛り上げるバンドだなぁ!っていうのが印象に残ってて。ウチらもわりとそういう毛色のバンドなんで。その時、スクービーが「Tighten Up」やっててウォーッ!って盛り上がって。ウチらもその当時は、「Tighten Up」的な曲を作るっていうのがテーマだったから。
MOBY JxJxがやってた連載コラムのタイトルも、「四の五の言わずにタイトゥン・アップ!」だったもんね(笑)。
コヤマ

俺らもRAW LIFEで初めてユアソンのライヴを観て、音源聴いた時のイメージとライヴの印象が結構真逆だったっていうか。最初に音源聴いた時は、渋谷系の延長みたいな、ものすごく趣味のいい方々なんだろうなって思ったんだけど。でも、RAW LIFEの会場に着いたらちょうどユアソンがやってて、二日目の朝だからすでに死んでる客とかもたくさんいて、みんながゾンビ化してる中に、ユアソンとユアソン観てる客だけがはしゃいでいる、と(笑)。

モーリス うわーっって、砂埃が舞っててね。
コヤマ そうそう。まるでゴーストタウンで祭りが行われているような、あの印象がすごく強いんだよね。まったく世間と関係ない感じというか、世捨て人な感じというか(笑)。そのあとオーサカ=モノレール観たら、もっと世捨て人だった(笑)。でまあ、そこでユアソン観て、ライヴすげぇんだ?っていう記憶があるね。
── さっき曲名が出てきましたけど、「Tighten Up」って曲は、スクービーとYSIGをつなぐキーワードのような気がするんですが。
マツキ うん、それはたしかにそうですね。
モーリス スクービーにイベント呼んでもらって対バンした時も、「Tighten Up」を一緒にやったからね。
── 一時期、YSIGの取材をしてると、よく「Tighten Up」の話題が出てきてましたよね。
JxJx そうっすね。「Tighten Up」って曲が持ってるあの感じを自らやるっていうのに、ヘンな意義を感じてたんですよね。それって何かを問いつめたことはなかったけど。ただ、あのカッコよさにやられてるかどうか?ってところで言えば、両バンドともやられているバンドですよね。
MOBY だからこそもっとも信頼できるところでもあるしね。絶対に間違いない。
モーリス ウチらは、あれを伝統芸能だと捉えてたワケですよ。俺が最初に聴いたのは、YMOヴァージョンだったけど。で、いろいろ聴いていくと、あの形式をやってるバンドが結構多いんだって気付いてね。あのコード感だったり、あのノリだったりね。いろんな人たち「Tighten Up」的なものを残してきたから、俺らも2000年代にひとつ残そうっていう話はしてましたね。
コヤマ 俺らはそこまで深く考えてなかったけどね。便利だからいいやって(笑)。
一同 (爆笑)
マツキ 演奏してる立場から言えば、何も考えなくていいからね(笑)。
MOBY うん。みんな知ってるし、どの曲にもつなげられるからね。
マツキ ダンスの要素もあり、ベースラインも効いてるし......。
モーリス ブレイクでベース入ってきて、カッティングも入ってきて......っていう機能美ね。
コヤマ やっぱ、発明品だな!って思うよね。ストーンズの「(I can't get no)Satisfation」のリフなんかと同じで、超えようと思っちゃダメなんだよね。
ナガイケ あのタイプの曲で、超えてる曲ないですからね。
JxJx ないっすね、たしかに(笑)。
コヤマ そう、だから「Tighten Up」はやっぱり発明なんだよ。
みんなで一斉に別方向へ 突っ走ってるような潔さ
JxJx

スクービーと深く知り合ってから、下北沢のCLUB Queで対バンで呼んでもらった時に思ったことなんだけど......たとえばさっきの「Tighten Up」っていう軸があるとしたら、それ以外のものに対する許容範囲が、僕が思ってる以上にスクービーのみんなは広かったってのを対バンした時に感じて、それがすごく面白くて。僕らもちょうどその頃、ルーツ・ミュージックから逸脱しはじめた時期だったんですよ。

コヤマ そのライヴで「A MAN FROM THE NEW TOWN」を新曲だって言ってやってたもんね。なんつう曲だ!って(笑)。
JxJx

(笑)そういうところを、みんなが舞台袖で観ながら面白がってくれてたんですよね。そのへんでも、スクービードゥーってバンドの面白さを、またひとつ発見してしまって。スクービー自体、いろんなバンドとも対バンしていってる感じもあって、バンドとしては自分たちというものがありつつ、いろんなところに行ったり来たり出来るような感じでやっているんだろうなっていうので、素晴らしいなって思いましたね。

モーリス 対バンして得るものがあったり、バンドが違う何かを見つけて次の曲作りだったり、ライヴのやり方だったりに反映してきてるっていうのの繰りかえしですよね。そういえば、ウチのダータカ(タカダ"ダータカ"ヒロユキ)がスクービーの影響受けてるんですよ。
スクービー一同 えぇっ!?
JxJx ダータカがライヴ中、その場でくるくる回るようになったんです。ちょいちょい回ってるなあと思いつつ、これは一度確認しなきゃダメだってことでで、「その動きはなんなんだ? YSIGで今までまったくなかった動きだぞ!」って本人に訊いたら「あの、スクービーのジョーくんの」って。
一同 (爆笑)
JxJx つっても、ジョーくんのそれとはだいぶ違うんですけどね(笑)。
モーリス 一人でアツくなってぐるぐる回って、それでいて回ったら回ったで、ベースも外れちゃうし!みたいな(笑)。
ナガイケ 最終的には俺のせいにされたりして(笑)。
モーリス 今回のツアーで、急にその引き出しを開けちゃったんですよ。急に。
コヤマ それは観たいねぇー!(笑)。
ナガイケ 俺がいる時はやらなかったりして(笑)。
JxJx

スクービーのライヴは、とにかくいい演奏をするっていう......ヘタしたら、ただ上手いだけでつまんない方向に行っちゃうかもしれないけど、そうじゃなくてワイルドな方向に持っていってて。ハプニング性みたいなものもあって、ライヴならではの生々しい部分が出てる。だから毎回印象が違うと思うんですよね。すごくグルーヴィな演奏をばっちりキメてくれる、他のバンドにはないスクービードゥーの魅力なんじゃないかと思います。しかも、みんなが見せ場を持ってるんですよ。

モーリス そうなんだよねぇ! ウチのハットリくん(ハットリ"ショーティ"ヤスヒコ)はしゃべらないって見せ場を持ってるけど(笑)。
ナガイケ 俺も来年あたりしゃべらないってのやってみようかな。
JxJx それ、どこからのインスパイアかわかんないって(笑)。
コヤマ ただ調子悪いだけの人に見えるからね(笑)。
── では、スクービーから見て、ライヴバンドとしてのユアソンの魅力ってどんなところにあると思いますか?
MOBY なんかイメージですけど、全員で足並み揃えてバカ騒ぎしてるっていう感覚がありますね。
コヤマ うん。足並み揃えて、足並み揃ってない感じ?(笑)。みんなで一斉に別方向へ突っ走ってるような潔さがあるから、観てて楽しいっすよね。演奏をせーの!ではじめた段階で壊れてるっていうか。
モーリス それはたしかにあるかもですね(笑)。
コヤマ みんなででっかいホースを持って、放水しまくってる感じね。でも、その放水は別に火を消すとかじゃなくて、何の意味もないの。何かブァーッって出てるのすごくね? オレの一番すごくね? って全員が言ってる。
JxJx シュウくん、それ前も言ってたよね(笑)。
コヤマ だから、悪ふざけですよね(笑)。でも、そこがすごくロックンロール的なんですよ。一番最初にせーの!でロックンロールをはじめた人は、たぶんこういう感じだったんじゃないか?って思うよね。

*つづきは、近日リリース予定のiPhone用Appzine(アプリで読む雑誌)『ramblin'』下北沢インディーファンクラブ特集に掲載されます。お楽しみに!

YOUR SONG IS GOOD

YOUR SONG IS GOOD
98年1月結成。サイトウ"JxJx"ジュン(オルガン、ヴォーカル 他)、ヨシザワ"モ~リス"マサトモ(ギター)、シライシコウジ(ギター)、ハットリ"ショ~ティ"ヤスヒコ(トロンボーン)、タカダ"ダ~タカ"ヒロユキ(ベース)、タナカ"ズィ~レイ"レイジ(ドラムス)からなる6人組。激烈で雑多なダンスミュージックを無礼講な演奏でフロアとお茶の間に投下中! 今年3月に待望のニューアルバム『B.A.N.D.』をリリース。先日、ツアーファイナルを日比谷野外音楽堂を成功させた。生田斗真主演の映画『シーサイドモーテル』の音楽を担当した、サウンドトラック・アルバムをリリースしたばかり。
http://www.kakubarhythm.com/
http://www.kakubarhythm.com/ysigblog/


YOUR SONG IS GOOD
『B.A.N.D.』
(NAYUTAWAVE RECORDS)


YOUR SONG IS GOOD
『SEASIDE MOTEL』
(NAYUTAWAVE RECORDS)

SCOOBIE DO

SCOOBIE DO
1995年結成。メンバーはコヤマシュウ(ヴォーカル)、マツキタイジロウ(ギター)、ナガイケジョー(ベース)、オカモト"MOBY"タクヤ(ドラムス)。インディーズでの活動を経て、2002年にメジャー・デビュー。2006年に日比谷野音にて結成10周年記念ライヴを行った後、同年に自身のレーベル、CHAMP RECORDSを設立。ロック、ソウル、ファンクなどの影響を受けたグルーヴィなサウンドと熱いライヴ・パフォーマンスで圧倒的な支持を集める。年間70本以上のライヴを行う屈指のライヴ・バンドである。今年3月にはメジャー在籍時のベスト・アルバム『Road to Funk-a-lismo! -BEST OF SPEEDSTAR YEARS-』を発表。7月7日にはニュー・アルバム『何度も恋をする』をリリースする。
http://www.scoobie-do.com/


SCOOBIE DO
『何度も恋をする』
(CHAMP RECORDS)


SCOOBIE DO
『Road to Funk-a-lismo! -BEST OF SPEEDSTAR YEARS-』
(スピードスター)

[SIF対談]

第三弾:TUCKER × やけのはら × 古川太一(RIDDIM SAUNTER)

2010.06.23 Wed

ターンテーブルからドラムス、ベース、さらには炎までも(!)奔放に操る唯一無二のステージをみせるエレクトーン奏者=TUCKER。各地の興味深いパーティにはほとんど彼の名前が載っていると言っても過言ではないだろう人気DJ、やけのはら。今や飛ぶ鳥を落とす勢いをみせるRIDDIM SAUNTERのドラマーであり、DJとしても活躍する古川太一。一見つながりがなさそうな、だけどどこか共通したニオイを感じさせる3人が、初めて集ったクロストーク!

構成/宮内 健(ramblin') 撮影/小原泰広

TUCKER × やけのはら × 古川太一(RIDDIM SAUNTER)

"変な人"とか言われるのはいいけど、"変態"って書かれるのはちょっとイヤ(笑)
── 3人はそれぞれ面識は?
やけのはら TUCKERさんとは面識ありますね。
古川 僕、やけのはらさんは名前は存じ上げてたんですけど、ちゃんとご一緒したことはなかったですね。
やけのはら そうですね。たぶんカクバリズムのイベントとか、人がいっぱいいるところではご一緒してそうですけどね。
TUCKER 僕はRIDDIM SAUNTER(以下、RDM)と、ロンドンで一緒にツアーまわったんだよね。
── TUCKERから見た、RDMの印象ってどうでしたか?
TUCKER あんまり偉そうには言えないけど(笑)、やっぱり躍動感っていうのがすごくあって。曲構成も楽器構成とかもすごくきちんとしてるんだけど、すごくユニークでもあって。シンセベースが中心になっているやつとかもあったかと思えば、オーケストラと一緒にやってたり。それでいて、ライヴとか結構めちゃくちゃだったりするから面白いよね。
── バンドでありつつ、だけどバンドっていう形態にこだわってない感じっていうのは、とくに最近のRDMのライヴを観てると思いますね。太一くんほど、あんだけステージの前のほうに出てくるドラマーもいないもんね?(笑)。間奏くらいのところで、ドラム叩かないで前に出てきて煽ったり(笑)。
古川 肝心なときに前に出てっちゃってるみたいな(笑)。ドラムも長く続けてると、どんどん叩けるようになるじゃないですか。普通に叩くことが、ちょっとつまんなくなっちゃったりして、そこで変化を得るために立ってドラムを叩いてみたりして。叩きにくい曲を、なんとか叩いてニヤッとするのが楽しかったり(笑)。
TUCKER そういうちぐはぐな、感情が高まったゆえに音がなくなってる!みたいな状況を何度か観て、それ面白いなぁって思って、相当笑ってたから。ステージは、結構みんな激しいよね。壊してる感がすごくって、一般的にそれがいいのはわからないですけど、やってるテンションが高くなっちゃって、思いがけずこうなっちゃった!っていうのは、観てて美しいものがある。
── やけのはらさんは、TUCKERとの出会いは覚えてますか?
やけのはら TUCKERさんと初めてご一緒したのは、2004年末ぐらいの青山蜂のイベントだったんですけど、その前に僕が初めて観たのは、TUCKERさんが渋谷のタワレコでインストア・ライヴやられてて。
TUCKER あーやった、やった!
やけのはら その時にすでにTUCKERさんのことを知っていたか、まったく知らないで観たかどうかは定かじゃないんですけど、たまたま渋谷にいたんでインストア覗いたら、なんかすごく変な人だなって思って、面白かったのが印象でしたね。たぶん基本軸は今とあんまり変わらないライヴでしたよね。一人でいろいろ楽器やって、エレクトーンに火つけたりもやってたんじゃないですか?
TUCKER やってたねー。うーん、あんま変わってないね、ホント(笑)。
やけのはら めちゃくちゃクレイジーで面白いなって思いました。
TUCKER でもなんかね、"変な人"とか言われるのはいいんですけど"変態"とか、"変態キーボーディスト"って書かれるのはちょっとイヤ(笑)。
やけのはら "変な人"と"変態"との差異はなんなんですか? なんかいっぱい両生類とか飼ってそうな感じとか?(笑)。
TUCKER うーん、なんかシモの話でいえば、スケベだけど変態じゃない、みたいな。変態ってなんかほら、たとえばエレクトーンの木目でアガっちゃうような、そういうのじゃない?(笑)。
一同 (笑)
TUCKER まあ、言われてもその場ではアハハとか笑って応えるけど、家に戻ってから「俺って変態かなー?」って考え込んじゃったり(笑)。
やけのはら でも、変わってるからっていうだけではなくて、純粋に面白かったんですけどね。王道は王道としてあっても、やっぱりその人なりのことをやってる人が好きだっていう志向があって。TUCKERさんを最初に見たときも、すごく上手いのもわかるんだけど、綺麗に聴かせるというよりも、わざわざ危ない橋を渡るような......やっぱりビビッと来ましたね。僕の中では、なんか(サイプレス)上野くんたちとかとも通じるところもあって。あえて不確定要素を入れるライヴをしたがってる感じというか。
TUCKER あー、なるほどね。不確定要素って、それこそRDMのライヴとかでもいっぱいあるけど、なんていうか、不確定要素=お客さんと共有できる要素だと思うんですよ。そういうのがライヴの醍醐味なんじゃないかなと思ってて。ま、それをあえて前もって用意するっていうのもちょっと違うと思うんだけど、そういう不確定さが入り込む余地があったほうがやっぱりライヴとしては面白いし......そうそう、以前、やけのはらくんと地方で一緒になった時、隣の塾から苦情が来たことあったじゃない?
やけのはら ライヴやってた場所の隣に塾があって、そこの人がバットもって乗り込んできて、うるさいっていって音量下げられたんです(笑)。
TUCKER その時、やけのはらくんがすごかったのが、場の空気をちゃんと読んで、MCもちょっと多めでDJして上手にまとめてたんですよね。そういう事態が起きたら起きたでやりようがあるんだなってっていうのを、やけのはらくんを見て思って。僕はなんか、ただただどんどん音量下げられていくばっかで。ライヴって普通、最後に向かって音量も上がっていくものだけど、反比例するかのように音量もだんだん下がってって(笑)。RDMとロンドン行った時も、全然音響がちゃんとしてないライヴハウス普通にあったけど、それはそれでその場で対処したことが、意外と面白かったりするんですよね。それはあんまり考えて出来ることじゃないから。だけどDJはとくに、そういう臨機応変な対応がはっきりフィードバックされるよね。
やけのはら うん、それは楽しいですよ。お客さんによって変わりますしね。
バンドっていう非効率的な作業の 面白さがやっとわかってきた
── やけのはらさんがメンバーとして参加されているyounGSoundsのライヴも、バンドも客席も一緒くたになって蠢いてる感じを観ると、ライヴならではの不確定要素の魔力みたいなものを感じます。
やけのはら younGSoundsは、あんまりメンバー揃って練習出来ないんですよね。毎回誰かが間違って。ライヴ終わってから、なんか「アレンジ変わりましたね?」とか言われたりするけど、「あれ間違っただけです」みたいな(笑)。
TUCKER でもやっぱりね、ライヴはキチッとすべきだなあと思うんだよね。俺は。
やけのはら 今さらTUCKERさんがそういうこと言いますか?(笑)。
TUCKER 違う違う(笑)俺は自分の中ではホントにキチッとやろうとしてるんだけど......もっときちんキチンとしたいんだけどね。
── キチッとやっていても、どこかでエラーが入って来たり?
やけのはら エラーが面白いって言ったらなんか変ですけど、TUCKERさんのライヴを観に来てるお客さんは、たとえば毎回同じ曲をやっても、その都度また変化していくTUCKERさんを楽しんでるような気はしますけどね。
── それこそ、ライヴに足を運ぶ理由というか、その場でしか体験出来ないものを、生で共有すそういう。そういう感覚をyounGSoundsのライヴを観た時も、これはやっぱり現場にいないと、このすごさは感じられないんだろうなって思いました。やけのはらさんは、younGSoundsはどういう経緯で参加されるようになったんですか?
やけのはら less than TVの谷口(順)さんがやってたバンドの、もともと参加していたメンバーが抜けて、そこに僕やイルリメ(現在は脱退)とか僕とかが入ってっていう感じ。僕は昔からless than TVの人たちとかファンだったんで、ぜひやります、と。僕は高校生の時にバンドやってたけど、それ以降はまるまる10年ぐらい、打ち込みのグループとかDJしかやってこなかったんで。大人になってから久しぶりに5人とか6人で音を出してみて、バンドっていう非効率的な作業の面白さをやっとわかってきたというか。やっぱり人と一緒に音を出すのってすごく楽しいじゃないですか。バンドが5人いたとして、それが1ずつ足されるんじゃなく、0.2ずつ集まってひとつの音楽になるっていう。それはDJでは味わえない感覚なんですよね。DJだとお客さんと自分とのコミュニケーションになるけど、バンドだとなんか変な言い方だけど、ステージの上だけで楽しいっていう部分もあって。
TUCKER でも、それをみんなが観に来てるっていうのもあると思う。現場が共有してる、スリリングな関係を観に来てる。
古川 うん、そういうのが面白いんですよね。
やけのはら でも、そう思うとTUCKERさんはソロだから、エネルギーの使い方は、DJとかと近い感じですかね? お客さん対TUCKERさんみたいな。
TUCKER うーん。というよりも、機材と俺みたいな?
やけのはら なんで機材と0.5ずつになってるんすか(笑)。
TUCKER 僕の場合、機材との会話が結構多いよね。ライヴでも一人でいろんな楽器を使って......っていうスタイルでやってると、作曲する時も、どうループさせていくか?とか、ステージでの動きとか、曲として面白いかっでいうのが考えに入ってきちゃう。たとえば(家電の)ドライヤーをどうやって演奏に使おうか?ってあーだこーだ悩んでる時に、うちのカミさんから「普通に良い曲を弾くのがライヴなんじゃないの」って言われて、ちょっとああそうかって。たしかにその通りではあるんだけど、実際そうやってみると、やっぱり地味だった(笑)。結局自分で考えるしかないっていうね......でも、バンドもそういう悩みどころはあるんじゃない?
古川 どうなんですかね。僕らの場合は、普通になってきちゃったらメンバー同士で楽器を交替してみたりしますね。僕ら、高校生の時から一緒にやってメンバーもいるんで、みんなでやってることが普通になりすぎちゃうところもあって。だから、当たり前になるのを阻止しようと、あえて壊していってるのかもしれない。
TUCKER わりとそういう意味では、RDMもかなり変態なことをしてますね(笑)。面白いなって思ったのは、RDMがアルバムのリリース前かなんかに収録してる全曲を、ドラムとベースだけで50秒ぐらいの曲にまとめるって作業をしてるやつが、YouTubeに上がってて(『Days Lead』全曲演奏 Drum & Bass)。だから、普通の音楽じゃないの。5秒とか10秒おきぐらいで、ドラムとベースが全部変わっていくっていう。ジョン・ゾーンがやってた、20秒の中で30ジャンル演奏します、みたいな。たぶんそれを知らないで、同じようなことをやってるんだろうけど、それを観て「うわーっ!なにこれ!」って感激して。
古川 あれは、バトルDJがヒップホップのいいところをつないでいく感覚を、バンドでやろうと思って。
TUCKER そうなんだ! あれ観て、斬新だなあと思って。一個の音楽としてなんかヘンなものになっている。
古川 まじっすか!? 初めて言われました!(笑)。あんまり話題に上がらなかったから、TUCKERさんにそう言ってもらえたのはめちゃくちゃうれしい! これやってる時からすごい面白くて、アイディア思いついた時なんか天才か!? って思ったぐらいなんですけど、YouTubeにアップしてみたら、再生回数が全然少なくて......。
TUCKER (笑)いやいや、俺はこれ観て「ウォーッ!やべぇ!」って。あれでグッときてくんないと困るよね(笑)。
古川 あの映像、最初はドラムだけで、次ドラムとベース、その次がドラムとベースとギター、で、最後に歌が入るバージョン......と、全部で4バージョンがアップされてるんです。
やけのはら うわっ、それめちゃくちゃマニアックですよ(笑)。
TUCKER まさに人力カットアップ! テープ編集するカットアップっていうのは、見たり聴いたりするほうも共有出来るスリルっていうのはないと思うんですよ。でも、俺があれを最初観て思ったのは、これは相当に練習したな。このくだらないことに対して、相当練習したはずだって思うと、それだけでもう笑える。あと(BPMが一緒だったり、決まったグルーヴがあるわけではない)秩序がないことをあえて人力で再現するのって、非日常的ですごくおかしいから、ああいうのを見てると手に汗握る感じはあるよね。
僕はドラムよりも先に、2枚使いでDJすることから音楽がはじまった
古川 僕はドラムよりも先に、2枚使い(でDJすること)から音楽がはじまったんで。ずっとジャグリングとかしてたんですけど、ドラムをやりはじめてから、だんだん演奏する方が楽しくなっていったんです。
── 以前、TUCKERに取材した時に訊いて印象に残ってる言葉なんですけど。もともとTUCKERはDMC(註:ターンテーブリストがスクラッチなどの妙技を競う世界的な大会)のDJバトルとかすごく好きじゃないですか? そうして好きで聴いてきたヒップホップから受けた影響を、同じようなスタイルで返すんじゃなくて、何か別なカタチで示すことが、リスペクトなんだって言ってたのが、すごく印象深くて。
TUCKER そんな偉そうなことを(笑)......でも、実際の話、海外とかに行って、「お前、日本人のくせによくやってるな。俺たちのカルチャーを後押ししてくれてありがとう」みたいなことを言われちゃうとダメかなあって思うんだよね。がんばってくれよ的な感想よりは、「何これ? どうなってんの?」って思ってもらったほうがいい。たとえば、海外の人が来てて食事に連れて行くとして、海外からフランチャイズしてるレストランとかに連れてくよりは、その土地でしか食べられない定食屋とかに連れてってあげるのが人情かなぁと思うんですよね。
── うんうん。
TUCKER 最近、韓国に行く機会が多いけど、やっぱりそこで洗練されたヒップホップを観たいわけではなく、東大門とかソウルの雑踏が目に浮かぶような音楽が聴きたいし、実際、そういう音を作ってる人もいるんですよ。僕はたぶん、そういうドメスティックなものが好きなんですね。
── そう思うと、やけのはらさんが七尾旅人さんと一緒にやってる「Rollin' Rollin'」も、日本人だからこそ感じられる、夜遊びしたあとのちょっとせつない感じとか、その場所に住んでないとわからない感覚みたいなものが、曲の中に落とし込まれてますよね。
TUCKER 僕がやけのはらくんの曲で聴いてショックを受けたのは、「東京の町も空気が悪くなっちゃってさ......」っていうような語りが入る曲があるじゃないですか?
やけのはら 僕が河童に憑依して若者を斬るっていう、日本昔話みたいな曲があったんですよ。それを、なぜかTUCKERさんが異常に気に入ってて(笑)。その曲は、諸事情によってまだ発売されてないですけど。
TUCKER えーっ? あれ発売してくださいよー。そう、あれは聴いて本当にいいなぁって思って。若者に対する嘆きみたいのが曲間に挿入されてるんですけど、やっぱり僕が感動するのって、何これ!? みたいな感覚を味わった時だし、そういうのをみんな楽しみにして音楽聴いてると思うんですよね。僕は別に"対 海外"ってことが強く自分の中であるわけじゃないけど、でもそれは、たとえば"対 やけのはら"にしてもそうだし、"対 RDM"にしても思うことなんだけど、やっぱり「これは何だ?」っていうものを見たいし、実際やけのはらくんにもRDMにも、それぞれにそういった感動を覚えたことがあるから。わかりやすくインターナショナルなことである必要は全然なくて、独特なものを僕は見てきたいし、自分もそうありたいし。
やけのはら でもまあ、自分たちのやれることしか出来ないっすからね。海外を意識しても、やっぱり上手く出来るわけがないんで......性格的な好みかもしれないけど、ゴール地点の違いみたいなものもあるのかもしれないですね。たとえば、すごくジャマイカ人みたいになりたいルーツ・レゲエの人とかって、僕はちょっと苦手みたいなところがあって。この人こういう風になりたいんだとか、こういう音を出したいんだっていうのが見えちゃうものより、もっと自分なりでいいんじゃないかって思うんです。僕自身、もとから好きなものが並行してたくさんあったんで、普通にやってたら自然とばらけていったんですけど。やっぱりガチのテクノとハナタラシみたいなのって融合できないじゃないですか?
TUCKER それにパッと見で、これとこれが融合してるなってわかるものって、あんまり面白くないよね。それよりも出所がわからないものが自然に出てくるものに興味を覚えるわけで。だからRDMの音楽とかも、今になってわかるけど、まさかDMCが要素としてあったんだ!っていうね(笑)。でも、日本ほど、俺たちの音楽はこれだ!って、もともとルーツにある音楽をわかりやすく表現出来ない国ってなかなかないと思うんだよね。たとえば和太鼓は日本の伝統としてあるけど、それがルーツだっていう感覚は、みんなの意識として共有されてない。
── 多くの人が一番慣れ親しんでる歌謡曲そのものが、いろんな音楽が複雑に混ざりあったミクスチャーだっていう事実もありますしね。
TUCKER そうそう。だからそういう感覚を楽しむのが面白いことだと思うし、たとえばアメリカのギャングスタ・ラップにしても、ジャマイカのルーツ・レゲエにしても、もちろん背景とか思想とかルーツを勉強すれば出来るけど、それを知らないで楽しく聴けることの出来る、唯一の国だとも思うんですよ。感情的にならずにいろいろ聴けるっていうのは、日本独自のいいところでもあると思うんですよね──もちろん俺もそれが悪いとこだって思ってた時期もあったんだけど──やけのはらくんのやってることもRDMがやってることも、それが理屈じゃなく日常と結びついて生まれてくるところに、日本人独特の感じがあると思うし、また、それを日本がどうのとか考えないでやってる。ちゃんと知識を必要としなくても、すぐ楽しめる音楽になってるし、そういうのがいいなって思うんですよ。
やけのはら そんなこと言ったらTUCKERさんの芸も、どこかの国の現住民が観ても楽しめそうな気がしますよね(笑)。
TUCKER 逆に言うと言葉がない、ヴォーカルがないから結局そういう風になっちゃうよね。でも、俺はその地域の人しか理解できない言葉のアートは絶対あるべきだと思うし。なんで俺がこういう話をするかっていうと、あまりにも海外の音楽や情報が幅を利かせすぎてる気がして。日本の音楽がアンダーグラウンド・シーンでもサブカルチャー・シーンでももっといっぱい広がって、もっと普通に触れられるようになってもいいのになって思う。
── でも、ここ数年でインディペンデントやってる人たちが、自分たちから発信しやすい環境が整ってきたり、アーティスト同士だったり、リスナー同士だったりで情報を共有して広まっていく機会も増えてきてるような気もしますよね。
TUCKER 韓国のアーティストとMySpaceで繋がって、ここ2年ぐらい韓国に行ったり、向こうから呼んだりしてるけど、そういうのって以前はなかなか出来なかったですからね。
古川 Twitterも大きいですよね。それでライヴに呼ばれたりとかも結構ありますし。いい意味で近い感じがしますね。
やけのはら 僕は事務所に所属するとか一切やってこなかったんで、変わらない感じでやってますけど──人との関係性だったり、ひとつひとつのイベントだったり、今までも地味にやってきたそういうやり方が普通になってきた感じというか。あとまぁ、いわゆる電脳ツールみたいなのは、僕みたいなやり方をしてる身にとっては宣伝しやすい。どこに広告頼んでインタビュー取ってもらったり......みたいなことしなくていいですから、個人的にはやりやすくなりましたね。
TUCKER やっぱり以前に比べたら、確実に面白いものは観られてるていうのが、実感としてきちんとある。それはいい傾向だと思うんだよね。

取材協力:渋谷 echo http://echo-shibuya.com/

TUCKER

TUCKER
90年代からエレクトーン奏者として活動。70年代の古いエレクトーンを奔放に使い倒し生まれる独特の音色とグルーヴを軸に、ターンテーブル、ドラム、ベース、玩具などなどさまざまな楽器をひとりで演奏するエクストリームなライヴ・パフォーマンスで熱狂的な支持を集めている。現在までに2枚のアルバムを発表。活動の場は国内のみならず、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど世界を股にかけて活躍中。また、JACKIE&THE CEDRICSやMONEY MARKらのライヴ/レコーディングに参加するほか、演劇やアートなどと多彩な分野とのコラボレーションも展開している。
http://tuckerweb.jp/
http://www.myspace.com/tuckerelectone



TUCKER
『ELECTOON WIZARD』
(ユニバーサルシグマ)

やけのはら

やけのはら
2003 年にエレクトロ・ヒップホップユニット、アルファベッツでアルバム『なれのはてな』リリース。その後、イルリメ、サイプレス上野とロベルト吉野、 STRUGGLE FOR PRIDE、BUSHMINDなど、数多くの音源に参加。なかでも七尾旅人×やけのはら名義でリリースされた「Rollin' Rollin'」は09~10年を代表するフロア・アンセムとして多くのリスナー層の耳を捕らえた。DJ としても「RAW LIFE」「ボロフェスタ」「SENSE OF WONDER」などの数々のイベントや日本中の多数のパーティに出演。また、MIXCD も多数制作。現在、今夏リリース予定の初ソロアルバムを鋭意製作中。また、younGSoundsにはサンプラー/ヴォーカルで参加として活動している。
http://yakenohara.blog73.fc2.com/


七尾旅人 × やけのはら
「Rollin' Rollin'」
(P-VINE)


MR. MELODY /
AKENOHARA /
タカラダミチノブ
『CHOUJA-MACHI SATURDAY MORNING』
(TIME PATROL)

古川太一(RIDDIM SAUNTER)

古川太一(RIDDIM SAUNTER)
2002年、高校の同級生を中心にRIDDIM SAUNTERを結成。05年初アルバム『Current』をリリース。70年代ソウル、ヒップホップ、パンク、ブラジル音楽など多彩な音楽性が煌やかに昇華したバンド・サウンドが大きな注目を集める。ステージ上で縦横無尽に繰り広げられるライヴ・パフォーマンスや、ジャケットからグッズなど細部に渡って行き届いたアートワークなど、こだわり抜いた表現スタイルで熱狂的な支持を得ている。最新作はノルウェー録音、ストリングスの導入など新機軸をみせたサード・アルバム『DAYS LEAD』。なお、古川個人としてはレギュラー・パーティの「MIXX BEAUTY」を筆頭にDJとしても活躍。またFRONTIER BACKYARDのサポートなども手がけている。
http://www.riddimsaunter.net/



RIDDIM SAUNTER
『DAYS LEAD』
(Niw!Records)

[SIF対談]

第二弾:曽我部恵一 × 星野 源(SAKEROCK)

2010.06.15 Tue

曽我部恵一BANDとして全国各地を飛び回るだけでなく、10年ぶりに復活したサニーデイ・サービスや、ソロの弾き語りなど止まることを知らない表現欲をみせる、曽我部恵一。
SAKEROCKはもちろん、俳優、文筆、映像制作という八面六臂の活躍ぶりに加え、6月23日には初のソロ・アルバム『ばかのうた』をリリースする、星野 源。
ともに音楽の中に、生活の風景や、浮かんでは消えゆく人々の想いを鮮やかに描いていくソングライターである二人が、初めてじっくりと語り合った。

構成/宮内 健(ramblin') 撮影/小原泰広

曽我部恵一 × 星野 源(SAKEROCK)

曽我部 この間、SAKEROCKとは"ザンジバルナイト"と"Springfields"と、続けてイベント一緒だったんだよね。
最近のライヴを2本立て続けに観て、すごくいいなぁと思って。
星野 ありがとうございます。恐縮です(笑)。
曽我部 以前に観たライヴと、またちょっと印象違ってて。
バンドのまとまり具合がすごいんだよね。
なんかハードコアっていうか、アメリカ中をひたすらツアーしてるバンドのような......そんな雰囲気を感じたんすよね。
星野 どさまわりしてる感じですかね?
曽我部 そう、どさまわりしてる感あるね(笑)。
SAKEROCKは、年間どのくらいライヴやってるんですか?
星野 いや、そんなにやってないんですよ。月に1本ぐらいで。僕のほうが芝居が入ると3カ月ぐらい何も出来なくなってしまうので、すぐに間が空いたりして。
曽我部 その間は特に練習とかもしないの?
星野 あまりないです。メンバーそれぞれ違うバンドがあるんで、そっちをやっていたり。
みんなとはSAKEROCK以外ではほぼ会わないんです。
それぞれちょうどよい距離感があって......飲み行ったりとかもしないし。
でも、そうしてると、久しぶりに会った時に、やっぱり楽しいし、ものすごく仲がいい(笑)。
曽我部恵一BANDのみなさんとは普段どんな感じなんですか?
曽我部 いや、普段はそんな会わないっすよ、もちろん(笑)。
星野 昔の雑誌とかで、いろんな人のインタビューとか読んだりすると、飲み行ってあいつが暴れてどうのこうの、みたいなことがよく書いてあって。
バンドやる人は、そういうのしなきゃいけないのかなって。
曽我部 まあ、そういう時期もありますけどね(笑)。
星野 そういうの読むたび「無理だー」と落ち込んでたんですけど(笑)、気持ちが少し楽になりました。
でも、曽我部恵一BANDっていうと、密度がすごい濃いじゃないですか? 
なんていうか、飲み会とかでとにかく近くなろうとかいうんじゃなくて、ライヴをすることでバンドを固めるっていう感じなんですか?
曽我部 だから打ち上げないんすよ、ウチら。
星野 ホントですか? それは素晴らしい!(笑)。
曽我部 ほとんどないよ。ツアー行っても打ち上げないし。
星野 僕が俳優として所属してる大人計画も、そんなに群れない人たちなんです。
関わるのも仕事してるときだけっていう、それがすごい心地よくって。
僕がお酒全然飲めないっていうのもあって。
「なんで飲まねぇんだよ!」とか「演劇論語り合おうぜ!」みたいなのが苦手なんですけど、そういう人が大人計画にはいないんですよ。
曽我部 まあ、ありますよね。そういう男くさい世界観(笑)。
星野 そういうの、なくていいんだって、今思いました。
曽我部恵一BANDのあの濃密さで、打ち上げがないっていうのが、すごい衝撃的(笑)。
曽我部 ツアーやってるともう、打ち上げれないっていうかね。疲労で(笑)。
まぁバンドって、とにかくライヴを重ねて濃くなってって、良くなっていくしかないなぁっていうのはありますね。
客が全然いない状況とか体験して、そういう時にどう感じたか、みんなわかってやってるから。
星野 今でも、自分たちのこと知ってる人たちがあまりいないアウェーな状況になると、スイッチが入る瞬間があって。
やっぱりそれは、客が全然いない時の経験や下積みみたいなのがあるからなんだろうなって思います。
曽我部 おれらもアウェーの方がすごいね、なぜか。
あるバンドのゲストとかで、ほとんどのお客さんがそのバンドのファンだったりする前で演る時とか、一番いいシチュエーションですね。
星野 燃え上がりますね(笑)。
そういう状況を面白がれるっていうのは、やっぱバンドのいいところですね。
曽我部 SAKEROCKもそういう意味では、すごいバンド感ありますよ。
星野 最近だんだんバンド感が出てきた感じがします。
曽我部 やっぱり、みんなの各々の音楽的な活動の幅が広がって、そこでバンドに戻ると、パワーがアップしてるんだと思うんですよね。
ステージも魅せるなぁって思うし。もう海外だろうが、どんなデカいとこでも出来ますよね。
星野 でも、最初のフジロックとか、そういう大きいステージ出させてもらえるようになった時は、なんか怖くて。
その時はみんな前向いてたんですよ。
ハマケンが真ん中にいて。で、それより少し後ろにみんないるっていうセッティングだったんです。
だけど、それを半円状の並びにして、みんなが向き合うように、なるべく近くでやるようにしたんですよ。
どんな大きい会場でもそういうセッティングにしたら、面白くなってきちゃって。大きい会場で、あの小っちゃい音でやるみたいなことがすごい楽しくて。そういう方が、より伝わったりするんだなぁって。
曽我部 すごくわかる。
曽我部恵一BANDも、ホントにどんなデカいとこでもほんとにもう、申し訳ないぐらいみんなギュッって寄っちゃってる(笑)。
ステージに空いてるスペースあるのに(笑)。
星野 それ、すごく大事ですよね。
曽我部 どこ行っても一緒なんですよ。
一番狭いライヴハウスのサイズでやっちゃってるから。それをスピーカーでどれくらい大きくして表現するかだけなんだよね。
でも、ステージの真ん中でギュッって寄ってる感じが、まさに"音楽"っていう感じで。
星野 あれ、楽しいですよね。これでいいんだ、って。
曽我部 そう。ショウじゃなくてもいいんだってね。

*つづきは、近日リリース予定のiPhone用Appzine(アプリで読む雑誌)『ramblin'』下北沢インディーファンクラブ特集に掲載されます。お楽しみに!

曽我部恵一

曽我部恵一
1971年生まれ。香川県出身。1995年サニーデイ・サービスのヴォーカリスト/ギタリストとしてデビュー。2000年の解散まで7枚のアルバムを発表。01年よりソロとしての活動をスタート。04年、メジャーレコード会社から独立し、東京・下北沢に〈ローズ・レコーズ〉を設立。以後オリジナリティ溢れる自由なインディペンデント活動を展開する。現在は4人組のロックンロール・バンド〈曽我部恵一BAND〉を中心に、アコースティック編成の〈曽我部恵一ランデヴーバンド〉、08年に再結成を果たした〈サニーデイ・サービス〉など、創作活動はとどまることを知らない。全国各地からのオファーに応え日本中を飛び回り、そのライヴ本数は年間100を越える。
http://www.sokabekeiichi.com/

曽我部恵一BAND『ハピネス!』(ROSE RECORDS)
曽我部恵一BAND
『ハピネス!』
(ROSE RECORDS)

サニーデイ・サービス『本日は晴天なり』(ROSE RECORDS)
サニーデイ・サービス
『本日は晴天なり』
(ROSE RECORDS)

星野 源
1981年生まれ。埼玉県出身。2000年、インストバンド〈SAKEROCK〉を結成。ギター、マリンバなどを担当しリーダーを務める。最新作は『ホニャララ』(カクバリズム)。星野個人としては、07年に写真家・平野太呂とのコラボによるCDフォトブック『ばらばら』をリリース。今年6月23日には"Label United"より初のソロ・アルバム『ばかのうた』をリリースする。また大人計画所属の俳優としても活躍し、現在はNHK朝のドラマ小説「ゲゲゲの女房」に出演中。そのほか、文筆業、映像制作など多岐に渡る活躍をみせている。
http://sakerock.com/
http://hoshinogen.com/

SAKEROCK『ホニャララ』(カクバリズム)
SAKEROCK
『ホニャララ』
(カクバリズム)

星野 源『ばかのうた』(Label United)
星野 源
『ばかのうた』
(Label United)

[SIF対談]

第一弾:角張 渉(カクバリズム) × 長崎貴将(ギャラクティック)

2010.06.10 Thu

下北沢の街を舞台にしたライヴ・サーキット=下北沢インディーファンクラブ。このイベントを企画発案し運営しているのが、YOUR SONG IS GOODやSAKEROCKなどを抱えるレーベル、カクバリズム代表・角張 渉と、COOL WISE MAN、グッドラックヘイワなどを抱えるギャラクティック代表・長崎貴将。彼らが新たに立ち上げた、このイベントに対する意気込みから、下北沢という街への想いまでを、ざっくばらん語りあうプロデューサー対談!

構成/宮内 健(ramblin')

角張 渉 × 長崎貴将

正直、ライヴ・サーキットには
あまり魅力を感じていなかった。
角張 もともとこのイヴェントは、長崎さんがやろうって言わなければなかったイヴェントなんですよ。
僕は大学に入って上京してから下北沢に遊びに来るようになって、それこそ卒業してからはディスクユニオン下北沢店でバイトしてたんで毎日のように通ってたんですけど、ライブハウスで飲んで、遊んでみたいな感じで過ごしていたわけなんですけど。
で、最近忙しくていけてなくて、久しぶりに長崎さんと二人でライヴハウス行って友達のバンドのライヴを観ながら飲んで話してる時に、こういう感じがやっぱり楽しいなって、あらためて感じたんですよね。
......エラそうに聞こえちゃったら本意じゃないんですけど、僕らが扱ってるアーティストは、最近ライヴやるところが若干キャパが上がっちゃってて、ライヴハウスの純粋な楽しさ─たとえば観客は50人ぐらいしかいないけど、バンドもすげぇカッコよくて、友達もみんないて、飲んでワハハってやってるような─今まで日常的にあったようなカッコよさを、二人で再確認したというか。
その時に、こういう感覚でどのライヴハウスもカッコいいヤツが出てて、みんなが街をウロウロしながら楽しんでもらえる、単純に自分たちが面白いって思えるライヴ・サーキットが出来たらっていう。
長崎 僕らはふだん、それぞれレーベルもやってマネジメントもやってるんですけど、どっちも抱えてると両方の視点からツアーなりイベントなりの計画してたりするので、どうしても戦略的にならざるを得ないところがあるんですよね。
だけど、そういうのが今回の下北沢インディーファンクラブにはまったくない、純粋に自分たちが楽しみたいっていう。
そういうところではすごく新鮮ですよね。
角張 ただ、実は僕はライヴ・サーキット系のイヴェントって、あまり行ったことがないし、正味な話すると、いわゆるライヴ・サーキットにあんまり魅力を感じてなかったところもあるんです、むしろ。
下北沢に限らず大阪しかり渋谷しかり、いろんなところでよくやってるイメージがあって。
── 結局、あまり面白くないって思えてしまうライヴ・サーキットっていうのは、ビジネス主導とかプロモーション主導だったりするさまざまな思惑があからさまに見えちゃうのがひとつの要因なんでしょうね。
それと、美術館でいうキュレーター的な、ひとつの審美眼でイベントを作り上げたり、出演バンドを揃えてないなっていうのを感じちゃうと、なんか醒めてしまうというか。
一件、なんの脈絡もなさそうなアーティストたちが並んでてても、ライヴ・サーキットを企画する側が、そこを共通して面白がれる筋道が示せてあげられればいいけど、そうじゃないところも多いですもんね。
角張 そう。
自分の経験でいえば、3年ぐらい前に下北沢で開催された深夜のクラブ・サーキット"下北ナイトウォーカー"って中学校の同じクラスで前の席に座ってたヤツが企画してる(註:企画者の一人である菅野克哉氏)イヴェントで、僕はそれにDJで呼ばれて。
これが非常に面白くて......って、その時もベースメントバーとWEDGE(現THREE)にしかいなかったんでいつもとあまり変わらないんですけど(笑)。
でも、こうやっていろんなところ回ったら楽しいんだろうなって思いつつ、夜も深かったんで行かなかったんですけ(笑)。
あと"Shimokita Round Up"とかは、『Quip』って雑誌が主催してることもあって、ひとつの枠組みというか色味が出せるので成功していて、面白いなーと思いますね。
そういったライヴ・サーキットの成功例もいろいろあるけど、そこで僕らなりのライヴ・サーキットの面白さを呈示できればと思って。
まぁ、憧れのSXSWっていうのはまずありますけど(笑)。
長崎 僕らのレーベルや所属してるバンドや関係が深いアーティストもそうだけど、今回の下北沢インディーファンクラブに出るバンドって、あまりライヴ・サーキットっぽくないメンツなんですよね。
なのでお客さんも、ふだんからそういうライヴ・サーキットにあまり行かない人も多いんじゃないかと思うんですよね。
だから「すごい楽しそう!」とか「新鮮!」って言われることが多いし、実際自分たちも新鮮味を感じるところも多いですからね。
角張 下北沢に違う空気を入れるっていうか、大体関西のバンドも多いし、下北沢であんまりライブやったことのないバンドも多いし。
でも、それでいいかなって思うんですよね。
そこで、いわゆる下北沢っぽいバンドっていうのは、僕らの中でも誰も発案しなかった。
シェルターといえば誰それみたいな、それやっちゃうと他のイベントと一緒になっちゃうし、俺らとやる必然性はないのかなって。
小さいライヴハウスならではの楽しさを
いろんな場所で同時多発的に起こしたい
長崎 あと、このイベントを企画する上で考えたのは、単純に、それぞれのライヴハウスが200人とか300人ぐらいのキャパだからこそ伝わる面白さっていうのも、すごくあるじゃないですか? 自分が今のような仕事をする以前、普通にライヴハウスに行ってた頃は、圧倒的にそういうところに通ってたわけで。
そういうところならではの楽しさを、いろんな場所で同時多発的に起こせるっていうのが、このイベントに期待をおけるところだと思うんですよね。
アホな野次とかさ、小さいライヴハウスならではな感じで飛び交う瞬間があるじゃないですか? そういうのってキャパが大きくなっていくにつれ、だんだんなくなっていきますよね。
当たり前のことなんでしょうけど。
── 今回、出演バンドを選んでいく上での基準みたいなものはあった?
角張 やっぱり、アーティストが観たいアーティストっていうのが大きいと思うんですよね。
各ジャンルかなり尖ったところをお呼びしてるんで、セールス云々はおいといて、バンド界隈とかアーティスト界隈から人気がある連中が多いんで。
"KAIKOO"にしても"RAW LIFE"にしても"ボロフェスタ"にしても、センスのいいセレクトの仕方をしてると思っていて、それは売り上げとか動員とか関係なしにやっていて、ミュージシャンズ・ミュージシャンというか、カッコいいことやってるヤツがいっぱいいるってうのが、単純だけど、ひとつのキーワードですよね。
ただ、今回あまりにもジャンル関係ないんで、そのぶん動員とかちょっと心配だったりもするけど(笑)。
── 今回は、かなり若いバンドもたくさん出ますよね?
角張 俺も長崎くんも、日々の業務に忙殺されて若いバンドとかあまりにも知らなくなってきちゃってたんで、ウェルカムな若い人たちもみたいし、俺らの世代ともぐちゃぐちゃになってほしいし......って思うと、PUNK ROCK CONFIDENTIAL JAPANの若山さんとか、渋谷TVの高松くんとか、今回一緒に企画に参加してもらってる、信用出来る耳のいい人に紹介してもらって。
長崎 結局、ウチらも外に向かっていかないと、ともすると自分たちの知り合いで固まっちゃう雰囲気ありますからね。
角張 それはありますよー。
やっぱりCOOL WISE MANとかサイプレス上野とロベルト吉野いると安心しちゃうから(笑)。
YOUR SONG IS GOODの超二日間なんて、僕のやりたいイベントの最たるものなんで(笑)。
それはともかく、下北沢インディーファンクラブは、ちょっと有名なバンドから若手バンドまで、200~400人のキャパでしっかり観られるっていうのは、バンドの実力もちゃんとわかるっていうか、底が見えるのがすごくいいなって思うし。
出る側も、比較されるバンドがいろいろいるんで、相当いいライヴしないと目立たないぞ!っていう、一見ぬるま湯っぽいようで、実はビシッとライヴやらないと痛い目にあうっていう状況の中で演奏することになると思うんでね。
お客さんもわかってる人が観に来るし、それだけ基準も上がってくるから、バンドもいいライヴしなきゃって燃えてくるというか。
もう、全員トリだと思ってライヴやってもらいたいですね! とか言って、うちのバンドが一番ユルかったらどうしよう(笑)。
長崎 まあ、それもアリだけどね(笑)。
角張 タイムテーブルがんがん押しちゃってライヴやれなくなっちゃったり(笑)。
時間内に終わらないから急遽ハコ変えよう!FEVERだ!って(笑)。
── それ面白い!(笑)
角張 でも、突発的にどこかでサプライズのライヴがあったりとか、街のどこかでなにかやったりっていうのは企画してて。
そういう情報はツイッターとかでお知らせすることになると思います。
── それはかなり楽しみ!
角張 フェスっぽい言葉を使わせてもらうとするなら「参加する」っていうね。
フェスってお客さんが主人公みたいなところあるじゃないですか? それのちょっと手前っていうか。
だから、週末に下北沢に来てもらって、レコ屋とかカフェとかメシ屋とか楽しんでもらって、とにかくぐちゃぐちゃしてもらいたい。
長崎 そうだね、ぐちゃぐちゃしてもらいたいね(笑)。

*つづきは、近日リリース予定のiPhone用Appzine(アプリで読む雑誌)『ramblin'』下北沢インディーファンクラブ特集に掲載されます。お楽しみに!

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