[レポート]

Live Report vol.1

2010.07.24 Sat

 下北沢に点在するライヴハウスを(真っ昼間から!)自由に行き来出来るというライヴハウス・サーキット=SHIMOKITAZAWA INDIE FANCLUBは、初年度にも関わらず2000人を超える動員を記録したという。これまでにも音楽の街=下北沢を舞台に展開されるイベントはいくつかあったし、それぞれが音楽を通して、下北沢という街の魅力を発見させてくれるものではあったが、このSHIMOKITAZAWA INDIE FANCLUBもまた、下北沢という街の新たな魅力をしっかりと引き出し、これまでにない街の楽しみ方を発見させてくれた、そんなイベントだったように思う。

 9つのライヴハウス・総勢71組にも及ぶお祭りだから、ハナから全部を観ることなんて不可能だとはわかっているが、それでも出来るだけ多くのステージを目撃しよう!と思い立ち、まるでシモキタでお遍路さんでもするかのように、街の端から端までをとにかく歩き回った。その結果(まさに)駆け足ながら23組のライヴを観ることが出来た。ざっと振り返ってみると、一発目のORGE YOU ASSHOLEにはじまって、THE 9MILES 〜 Far France 〜 SEBASTIAN X 〜 OTOTOI GROUP 〜 T字路's 〜 踊ってばかりの国 〜 CERO 〜ステルス 〜 住所不定無職 〜 グッバイマイラブ 〜 アルカラ 〜 藤原ヒロシ+曽我部恵一 〜 NONCHELEE 〜 ON THE ON THE BUSH 〜 THE CHERRY COKE$ 〜 L.E.D. 〜 John.B & The Donuts! 〜 FIGHT IT OUT 〜 やけのはら&ドリアン 〜 WE ARE! 〜COOL WISE MAN 〜 YOUR SONG IS GOOD。文字にしてみると、よく観たもんだと我ながら半ば呆れてしまうが、さほど疲れてもいないのが不思議なもんで。それは、最初覚悟してたよりも歩くのが苦にならなかったかもしれない。ERAからBASEMENT BARとか、そこからFEVERとか、地図上では結構離れてるように思えるけど、全然歩ける距離! フジロックのジプシーアヴァロンまでと比べたら......って、比較できるものじゃないが、さっきまで観てたライヴを反芻しつつ(途中でコンビニなんかで冷気&水分補給したりしつつ)歩いてるうちに、次の会場まで辿り着いてたりするもので。そこはやっぱり、下北沢の地の利だ。

 あと、今回はイベント自体がツイッターと連動してたのも見逃せない。各ライヴハウスの入場規制などの情報を即時ツイッターにUPし、情報を共有するというのは、都会の真ん中のイベントだから成立したのかもしれない。実際、筆者もシェルターのトリを飾ったSAKEROCKが入りきれなかったお客さんのために急遽2ステージめをやるという情報もツイッターで知って、YOUR SONG IS GOODのラスト1、2曲のみ残してシェルターへ急行することが出来た(到着した時には、ちょうどハマケンが最後のお礼をしてるところだったが......)。

 今回目撃した23組の内、初めてライヴを観るバンドが19組。そう、今回は意識的に初見のバンドばかりを狙っていったのだ。さわやかな名前からは想像つかないほどの熱演でトップバッターの座を華々しく飾ったFar France。和のメロディとゲーム音楽が衝突したようなサウンドと女性ヴォーカルの個性的な声がクセになるSEBASTIAN X。元オイスカのタエちゃんが強烈な嗄れシャウトでブルーズを歌うT字路's。サイケな匂いに満ちたサウンドと独特のヴォーカルで一気に世界へと引き込まれた、踊ってばかりの国。ライフサイズ・リズム&ブルースなんて呼びたくなるような人懐っこい楽曲が魅力のCERO。ちらりと狂気が見え隠れする"カワイイ"がたまらない、住所不定無職。スーパーにフリーでフリーキーなダブを魅せた博多のリー・ペリー!(は言い過ぎか?)NONCHELEE。もはや貫禄すら感じる圧倒的な酒ノリパフォーマンスを見せてくれたTHE CHERRY COKE$。年齢を重ねたからこそ出せる味わい深いロックを聴かせてくれた、John.B & The Donuts!......もちろん2、3曲しか聴けてないものがほとんどだけど、一発で好きになってしまうような素晴らしいバンドと多く出会えたのは、とにかく嬉しい。
 予想以上に入場規制が多くなってしまったことなど、次回への課題はいくつかある。実際、お目当てのバンドが観れなかったとか、予定どおりに回れなかった人がほとんどだろう。もちろんそこで、がんばって列に並んで是が非でもお目当てのバンドを観る!というのも、人それぞれの見方で自由だ。でも、そこで素早く考えを切り替えて、他の気になるバンドを観に行ってみるのも、有効な時間の使い方だと思う。知らない名前でも飛び込めば、そこにはきっと新しい音楽との出会いが待ってるはずだから。もし、それでも気になるバンドが見当たらないで時間が空いてしまったら、そのへんの店を覗いてみたり、疲れたらちょっとお茶してみたり、なんならライヴハウスで偶然出会った仲間と一杯飲みはじめちゃうっていうのも全然アリだと思うし......そういう楽しみ方が実に気軽に出来ちゃうのが下北沢という街なんだ! と、一日かけて街を歩きまわって、あらためてわかったような気がする。世界じゅう探しても、生活と音楽の現場がこれほどまでに密着していて、しかも興味深いスポットがコンパクトにまとまっている街って、やっぱり珍しい。イベント中盤以降からは、リストバンド巻いてる人たちが道ばたで談笑してたり、乾杯してたりして、自由に楽しんでる姿が街のあちこちで見受けられたのもいつもと違う風景で、それを見てるだけでワクワクした。もし来年にでも第2回が開催されることになったら、主催者側も改善すべきところをしっかり改善し、より充実したイベントにしてくれることだろうし、参加する観客も、もっと快適に楽しめるような一日の過ごし方をそれぞれ考えることだろう。下北沢という街を舞台にしたライヴ・サーキットならではの楽しみ方は、もっとたくさんあるはずだから。角張さんと長崎さんには、がんばって次回開催にこぎつけてほしい!

 そういえば、イベント当日はいかに多くのバンドを観れるか?ってことに専念するため、アルコールを一滴も飲まないでいたのだ。で、終盤。FEVERに行って、久々に観たCOOL WISE MANの素晴らしくアグレッシヴなステージにすっかりアゲられて、約半日の断酒を解禁。あの時の一杯はホントにウマかった! ちょっと酔いが回ってきた頃に、予定より遅れてはじまったYOUR SONG IS GOODのステージには、昼間、251の近くでBREAKfASTの森本雑感氏らと缶ビール飲みながら盛り上がってたJxJxの姿が。いつにも増して鬼気迫る迫力を感じたのは、各会場で展開された素晴らしいライヴの数々に感化されたのか? あるいはライヴ前に結構飲んじゃってたからなのか? どちらかはわからないが、とにかく言えることは、やってる方も観てる方も楽しみながら参加した長い一日だった......と、客席にダイブするJxJxのシルエットを眺めながら思ったのだった。

文/宮内 健(ramblin')
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