[SIF対談]

第一弾:角張 渉(カクバリズム) × 長崎貴将(ギャラクティック)

2010.06.10 Thu

下北沢の街を舞台にしたライヴ・サーキット=下北沢インディーファンクラブ。このイベントを企画発案し運営しているのが、YOUR SONG IS GOODやSAKEROCKなどを抱えるレーベル、カクバリズム代表・角張 渉と、COOL WISE MAN、グッドラックヘイワなどを抱えるギャラクティック代表・長崎貴将。彼らが新たに立ち上げた、このイベントに対する意気込みから、下北沢という街への想いまでを、ざっくばらん語りあうプロデューサー対談!

構成/宮内 健(ramblin')

角張 渉 × 長崎貴将

正直、ライヴ・サーキットには
あまり魅力を感じていなかった。
角張 もともとこのイヴェントは、長崎さんがやろうって言わなければなかったイヴェントなんですよ。
僕は大学に入って上京してから下北沢に遊びに来るようになって、それこそ卒業してからはディスクユニオン下北沢店でバイトしてたんで毎日のように通ってたんですけど、ライブハウスで飲んで、遊んでみたいな感じで過ごしていたわけなんですけど。
で、最近忙しくていけてなくて、久しぶりに長崎さんと二人でライヴハウス行って友達のバンドのライヴを観ながら飲んで話してる時に、こういう感じがやっぱり楽しいなって、あらためて感じたんですよね。
......エラそうに聞こえちゃったら本意じゃないんですけど、僕らが扱ってるアーティストは、最近ライヴやるところが若干キャパが上がっちゃってて、ライヴハウスの純粋な楽しさ─たとえば観客は50人ぐらいしかいないけど、バンドもすげぇカッコよくて、友達もみんないて、飲んでワハハってやってるような─今まで日常的にあったようなカッコよさを、二人で再確認したというか。
その時に、こういう感覚でどのライヴハウスもカッコいいヤツが出てて、みんなが街をウロウロしながら楽しんでもらえる、単純に自分たちが面白いって思えるライヴ・サーキットが出来たらっていう。
長崎 僕らはふだん、それぞれレーベルもやってマネジメントもやってるんですけど、どっちも抱えてると両方の視点からツアーなりイベントなりの計画してたりするので、どうしても戦略的にならざるを得ないところがあるんですよね。
だけど、そういうのが今回の下北沢インディーファンクラブにはまったくない、純粋に自分たちが楽しみたいっていう。
そういうところではすごく新鮮ですよね。
角張 ただ、実は僕はライヴ・サーキット系のイヴェントって、あまり行ったことがないし、正味な話すると、いわゆるライヴ・サーキットにあんまり魅力を感じてなかったところもあるんです、むしろ。
下北沢に限らず大阪しかり渋谷しかり、いろんなところでよくやってるイメージがあって。
── 結局、あまり面白くないって思えてしまうライヴ・サーキットっていうのは、ビジネス主導とかプロモーション主導だったりするさまざまな思惑があからさまに見えちゃうのがひとつの要因なんでしょうね。
それと、美術館でいうキュレーター的な、ひとつの審美眼でイベントを作り上げたり、出演バンドを揃えてないなっていうのを感じちゃうと、なんか醒めてしまうというか。
一件、なんの脈絡もなさそうなアーティストたちが並んでてても、ライヴ・サーキットを企画する側が、そこを共通して面白がれる筋道が示せてあげられればいいけど、そうじゃないところも多いですもんね。
角張 そう。
自分の経験でいえば、3年ぐらい前に下北沢で開催された深夜のクラブ・サーキット"下北ナイトウォーカー"って中学校の同じクラスで前の席に座ってたヤツが企画してる(註:企画者の一人である菅野克哉氏)イヴェントで、僕はそれにDJで呼ばれて。
これが非常に面白くて......って、その時もベースメントバーとWEDGE(現THREE)にしかいなかったんでいつもとあまり変わらないんですけど(笑)。
でも、こうやっていろんなところ回ったら楽しいんだろうなって思いつつ、夜も深かったんで行かなかったんですけ(笑)。
あと"Shimokita Round Up"とかは、『Quip』って雑誌が主催してることもあって、ひとつの枠組みというか色味が出せるので成功していて、面白いなーと思いますね。
そういったライヴ・サーキットの成功例もいろいろあるけど、そこで僕らなりのライヴ・サーキットの面白さを呈示できればと思って。
まぁ、憧れのSXSWっていうのはまずありますけど(笑)。
長崎 僕らのレーベルや所属してるバンドや関係が深いアーティストもそうだけど、今回の下北沢インディーファンクラブに出るバンドって、あまりライヴ・サーキットっぽくないメンツなんですよね。
なのでお客さんも、ふだんからそういうライヴ・サーキットにあまり行かない人も多いんじゃないかと思うんですよね。
だから「すごい楽しそう!」とか「新鮮!」って言われることが多いし、実際自分たちも新鮮味を感じるところも多いですからね。
角張 下北沢に違う空気を入れるっていうか、大体関西のバンドも多いし、下北沢であんまりライブやったことのないバンドも多いし。
でも、それでいいかなって思うんですよね。
そこで、いわゆる下北沢っぽいバンドっていうのは、僕らの中でも誰も発案しなかった。
シェルターといえば誰それみたいな、それやっちゃうと他のイベントと一緒になっちゃうし、俺らとやる必然性はないのかなって。
小さいライヴハウスならではの楽しさを
いろんな場所で同時多発的に起こしたい
長崎 あと、このイベントを企画する上で考えたのは、単純に、それぞれのライヴハウスが200人とか300人ぐらいのキャパだからこそ伝わる面白さっていうのも、すごくあるじゃないですか? 自分が今のような仕事をする以前、普通にライヴハウスに行ってた頃は、圧倒的にそういうところに通ってたわけで。
そういうところならではの楽しさを、いろんな場所で同時多発的に起こせるっていうのが、このイベントに期待をおけるところだと思うんですよね。
アホな野次とかさ、小さいライヴハウスならではな感じで飛び交う瞬間があるじゃないですか? そういうのってキャパが大きくなっていくにつれ、だんだんなくなっていきますよね。
当たり前のことなんでしょうけど。
── 今回、出演バンドを選んでいく上での基準みたいなものはあった?
角張 やっぱり、アーティストが観たいアーティストっていうのが大きいと思うんですよね。
各ジャンルかなり尖ったところをお呼びしてるんで、セールス云々はおいといて、バンド界隈とかアーティスト界隈から人気がある連中が多いんで。
"KAIKOO"にしても"RAW LIFE"にしても"ボロフェスタ"にしても、センスのいいセレクトの仕方をしてると思っていて、それは売り上げとか動員とか関係なしにやっていて、ミュージシャンズ・ミュージシャンというか、カッコいいことやってるヤツがいっぱいいるってうのが、単純だけど、ひとつのキーワードですよね。
ただ、今回あまりにもジャンル関係ないんで、そのぶん動員とかちょっと心配だったりもするけど(笑)。
── 今回は、かなり若いバンドもたくさん出ますよね?
角張 俺も長崎くんも、日々の業務に忙殺されて若いバンドとかあまりにも知らなくなってきちゃってたんで、ウェルカムな若い人たちもみたいし、俺らの世代ともぐちゃぐちゃになってほしいし......って思うと、PUNK ROCK CONFIDENTIAL JAPANの若山さんとか、渋谷TVの高松くんとか、今回一緒に企画に参加してもらってる、信用出来る耳のいい人に紹介してもらって。
長崎 結局、ウチらも外に向かっていかないと、ともすると自分たちの知り合いで固まっちゃう雰囲気ありますからね。
角張 それはありますよー。
やっぱりCOOL WISE MANとかサイプレス上野とロベルト吉野いると安心しちゃうから(笑)。
YOUR SONG IS GOODの超二日間なんて、僕のやりたいイベントの最たるものなんで(笑)。
それはともかく、下北沢インディーファンクラブは、ちょっと有名なバンドから若手バンドまで、200~400人のキャパでしっかり観られるっていうのは、バンドの実力もちゃんとわかるっていうか、底が見えるのがすごくいいなって思うし。
出る側も、比較されるバンドがいろいろいるんで、相当いいライヴしないと目立たないぞ!っていう、一見ぬるま湯っぽいようで、実はビシッとライヴやらないと痛い目にあうっていう状況の中で演奏することになると思うんでね。
お客さんもわかってる人が観に来るし、それだけ基準も上がってくるから、バンドもいいライヴしなきゃって燃えてくるというか。
もう、全員トリだと思ってライヴやってもらいたいですね! とか言って、うちのバンドが一番ユルかったらどうしよう(笑)。
長崎 まあ、それもアリだけどね(笑)。
角張 タイムテーブルがんがん押しちゃってライヴやれなくなっちゃったり(笑)。
時間内に終わらないから急遽ハコ変えよう!FEVERだ!って(笑)。
── それ面白い!(笑)
角張 でも、突発的にどこかでサプライズのライヴがあったりとか、街のどこかでなにかやったりっていうのは企画してて。
そういう情報はツイッターとかでお知らせすることになると思います。
── それはかなり楽しみ!
角張 フェスっぽい言葉を使わせてもらうとするなら「参加する」っていうね。
フェスってお客さんが主人公みたいなところあるじゃないですか? それのちょっと手前っていうか。
だから、週末に下北沢に来てもらって、レコ屋とかカフェとかメシ屋とか楽しんでもらって、とにかくぐちゃぐちゃしてもらいたい。
長崎 そうだね、ぐちゃぐちゃしてもらいたいね(笑)。

*つづきは、近日リリース予定のiPhone用Appzine(アプリで読む雑誌)『ramblin'』下北沢インディーファンクラブ特集に掲載されます。お楽しみに!

PAGE TOP